Pew Research Centerが2026年8月20日、Web上の文章のうちどれだけがAIによって書かれているかを実測した分析を公開した1。2026年7月時点のランダム標本では**全体の10%**にAIによる執筆・編集の顕著な痕跡があり、公開日がChatGPT公開後だと判別できるページに絞ると3分の1を超えた1。
同センターは、生成AIが人間らしい文章を作れるようになったことが「現代のWebについての基本的な問い」を生んだとして、この調査の動機を説明している1。著者はSamuel Bestvater氏ら5名1。
49万ページを1つの検出モデルにかけた
方法は公開されている。Pewは、2008年からWebアーカイブを収集している非営利団体 Common Crawl のデータを使った2。Common Crawlはおよそ月に一度、公開されているインターネットを巡回してその時点のスナップショットを作る2。
Pewは2021年1月から2026年7月までに作られた49回分のクロールそれぞれから英語ページを1万件ずつランダムに抽出し、合計49万件を集めた2。各ページについて、HTML全体を含むWARCレコードと、HTMLコードや画像を除いた本文だけを含むWETファイルの両方を取得している2。
判定には、Pangramが開発したオープンウェイトの検出モデル editlens_Llama-3.2-3B(Open Pangram)を使った2。このモデルはテキストを受け取って0から1のスコアを返し、0が完全に人間の書いた文章、1が完全にAIの生成した文章を意味する2。今回の分析では、スコア0.2以上のページを「意味のある」AI執筆・編集の痕跡があるものとして扱っている2。モデルは、人間よりAIが使いがちな語・言い回し・言語的な癖のパターンを見る、というのがPewの説明だ1。
10%と35%は、別のものを数えている
2026年7月に集めた1万件の標本では、**10%**に顕著な痕跡が出た1。Pewはこれを2022年後半に始まった上昇傾向の一部だとし、ChatGPTに続いてClaudeやGeminiといったチャットボットが出るなかで割合が増え続けていると述べている1。
ただし、Webには新しいものと古いものが混ざっている。Pewは、標本の中にはそもそもAIが書きようがなかったページが多く含まれると指摘したうえで、公開日がChatGPT公開(2022年11月30日)以降だと判別できるページだけに絞った1。すると2026年7月のスナップショットでは、3分の1を超えるページに痕跡が出た1。方法論のページでは、この数値は**35%**と具体的に示されている2。
ここは読み違えやすいところで、Pew自身が注意書きを付けている。クロール標本のうちHTMLに公開日のフィールドを持つページは10〜15%程度しかない2。そして「公開日が取れるページの集合はWebのランダムな部分集合ではないため、ChatGPT公開後についての推定値はWeb全体ではなく、日付付きコンテンツにおける割合を反映している」と明記している2。つまり35%は「日付が取れるページのうち」の数字であって、Web全体の3分の1という意味ではない。
もう1つの限界として、Common Crawlに入るには公開されていることが条件になるため、ペイウォールやログインが必要なサイトは過小評価されている可能性が高いとも書かれている2。
Pewは、この結果が別の研究とおおむね一致するとしている。方法論ページによれば、Internet Archiveのデータを使ったDolezal et al.(2026年)の研究は、新しく公開されたサイトの35%にAI生成またはAI支援のテキストが含まれると結論づけていた2。
ドメインによって差が開いた
痕跡の出方はWeb全体で一様ではない。
Pewによれば、ChatGPTが公開された当初は、AI執筆を示唆する言語パターンは主要なトップレベルドメイン(.com、.org、.edu、.gov)でほぼ同じ割合で現れていた1。それが2026年の標本では、**.comのページの約10分の1、.orgが4.6%、.eduと.govはいずれも約1%**という差になった1。.comは.orgのおよそ2倍、.eduや.govの10倍にあたる1。グラフの各点は6か月平均で示されている1。
商業的なページほど痕跡が濃く、教育機関や政府のページほど薄い、という分布になっている。
「AIっぽい書き方」が広がった
Pewはもう1つ、文章の特徴そのものの変化を測っている。
前提として、同センターはAI検出モデルが完璧ではなく、人間が書いた個別の文書をAI由来と誤判定することも逆もあると断ったうえで、非常に大きな文章の集合をまとめて見れば、特定の記号・語・言い回しがAI生成の文章に高い割合で現れることが見えてくる、と説明している1。
理由についてのPewの説明はこうだ。AIモデルは人間の書いた大量の文章で学習し、その書き方の癖を真似るようになる。学習の過程で特定の種類の文章が過剰に含まれることがあり、その結果、人間が普通使う頻度より高く特定の語や言い回しを使うようになる1。例として挙げられているのがエムダッシュ(—)で、ジャーナリズムや学術的な文章で多用される記号だが、AIモデルは人間よりずっと頻繁に使う傾向がある1。項目を3つ並べることやリストでオックスフォードコンマを使うことも、人間の書き手より多いという1。
2023年のスナップショットと今日のWebを比べた結果は次のとおりで、いずれも1万語あたりの出現数で測られている1。
- エムダッシュ: 約2倍
- オックスフォードコンマ: 63%増
- AIが好む語彙(“delve”、“interplay”、“testament” など): 2倍超
- 「it’s not just X, it’s Y」型の否定並列: ほぼ3倍(ただし全体としてはまだ少ない)
なお、AIが好む語彙としてPewが列挙しているのは “additionally”、“align with”、“boasts”、“crucial”、“delve”、“enhance”、“essential”、“highlight”、“interplay”、“key”、“landscape”、“meticulous”、“pivotal”、“showcase”、“significant”、“tapestry”、“testament”、“underscore”、“valuable”、“vibrant” などで、この比較の標本は2022年11月30日以降に公開されたページに絞られている1。
これらの増加をAI起因と断定する記述は原文にない。あくまで、AIが好む特徴がWeb上で増えているという観察の提示にとどまっている。
検出モデルは、個別のページを裁く道具ではない
この調査でもう1つ重要なのは、Pewが検出モデルの扱い方を明示している点だ。
同センターは、Open Pangramでの結果が特定のモデルに依存していないかを確かめるため、7回分のクロールから62,370ページを抜き出してPangramの商用モデル Pangram 3.3 にもかけ、結果を比較した2。両モデルは96%のケースで一致し、Cohenのκ(カッパ)は0.61だった2。
そのうえでPewはこう書いている。2つのモデルがページ単位で食い違ったことは、AI検出モデルが確率的な道具であり、個別のページについての分類がそのページの執筆者に関する確定的な評決と受け取られるべきではないことの再確認になる、と2。ただし同じ道具を大量のページに一貫して当てれば、AI執筆の割合が時系列でどう動いたかを体系的に追える、というのがこの調査の立場だ2。
初期のクロールについても注意が付いている。ChatGPT以前のクロールでは2つのモデルの差が最も大きく、Pangram 3.3 の推定値が非常に低かったのに対しOpen Pangramは1%程度と高めだった。Pewはこれを、AI利用が一般的でなかった時期のページに対してOpen Pangramの偽陽性率が高いことを示唆する、と述べている2。
読む側と、出す側それぞれの話
この数値が効いてくる場面はいくつかに分かれる。
コンテンツを出す側から見ると、痕跡の濃さがドメインによって開いているという結果は、商業サイトの文章が全体として似通ってきていることを示している。エムダッシュやオックスフォードコンマの増加は、それ自体が品質の問題ではないが、機械が書いたときに出やすい特徴が増えているという事実は、差別化の材料がどこにあるかを考える材料になる。
検索から人を集める側にとっては、同じ8月20日にGoogleがパブリッシャーが自サイトに置ける「Preferred Sources」ボタンを配ったことと合わせて読める。AI生成のページが増えるほど、どのソースを見せるかという選別の問題が前に出てくるという構図になっている。ブラウザ側でも、Mozillaが Firefox の Smart Window に検索サービスExaとの提携を追加し、出典つきでWeb情報を取れるようにしたばかりだ。
そして、社内で「これはAIが書いたのか」を判定したい向きには、Pewの注意書きのほうが本体に近い。検出モデルは集計には使えるが、個々の文書の執筆者を確定する道具ではない、と調査の当事者が明記している2。人やコンテンツを個別に裁く根拠として検出スコアを使うなら、96%一致・κ=0.61という数字が同時に意味している4%の食い違いを、誰が引き受けるのかを決めておく必要がある。
機械が書いたものと人が書いたものを見分ける話は、文章だけの問題でもない。Cloudflareは8月にAIエージェントに身元と支払い手段を持たせる仕組みを出しており、そちらは「誰がアクセスしてきたか」を証明可能にする方向の答えだった。Pewの調査は、証明の仕組みがない状態のWebが今どうなっているかを、公開された手順で数えたものにあたる。
Sources
- How Much of the Internet Is Written With AI? - Pew Research Center(2026年8月20日)
- Methodology - Pew Research Center、上記調査の方法論(2026年8月20日)
- A third of web pages published since ChatGPT’s launch show signs of AI authorship, study finds - TechCrunch(2026年8月20日)