Mozillaが2026年8月18日、Firefoxの「Smart Window」に3つの機能を追加し、あわせて検索・検索取得(リトリーバル)の会社 Exa.ai との提携を発表した12。Mozillaは Smart Window を、プライバシーを優先したAI搭載のブラウジング体験で、オンラインで始めたことを最後まで終えられるように設計したものだと位置づけている1。
前提として置かれているのは、利用者が共有すると選んだ文脈だけを使うという設計だ。開いているタブや関連する閲覧履歴などがそれにあたり、作業を再開するときに手順をたどり直さずに済むようにする、という説明になっている1。
足されたのは「答えの確かめ方」と「散らかったタブ」
Mozillaは数か月かけてコミュニティとともにベータで作り、テストしてきたとしたうえで、今回追加した機能を3つ挙げている1。
ひとつめが出典つきの回答。Exaとの新しい提携により、Smart Window は最新のWeb情報を取得し、その回答の裏にある出典を、別の検索結果ページに移動させることなく示せるようになった1。Exa側の記事では、この見せ方についてもう少し踏み込んでいる。回答を得たとき、それがどこから来たのかが見える。「citations」メニューの奥に埋もれているのではなく、その場に出ていて、2秒眺めれば信じてよいのか、もっと読むべきなのかがわかる——というのがMozillaの説明だ2。
ふたつめがタブのグループ化。関連するタブのまとまりを提案し、開いているものを整理して後から戻りやすくする。重複したタブを見つけてワンクリックで閉じることもできる1。
みっつめが履歴の視覚的なプレビュー。閲覧履歴のページを見た目で示すことで、似たような結果の中から目当てのページを、ひとつずつ開いて確かめなくても見分けられるようにする1。
Mozillaはこの3つを、タブと検索と時間をまたいで作業を進め続けるためのもの、とまとめている1。
「AI Window」から名前と狙いが変わった
今回のリリースには、はっきりした前史がある。Mozillaは2025年11月に「AI Window」という初期コンセプトを公開していた。ブラウジング中にAIアシスタントと会話して助けを得られる、利用者が制御する場所を作るとどうなるかを探るもので、次にどこへ向かうかをコミュニティに形作ってもらうために早い段階で公開した、と書いている1。
そのあと利用のされ方を見ていて、一貫した傾向が出てきた——人々はそれを日々のブラウジングの一部として使うようになっていた。検索し、移動し、そもそもオンラインに来た理由である作業を進める、という使い方だ1。ここから、AIとの会話の場から、作業を前に進めるための広いブラウジング体験へと位置づけを変えたことになる。
Head of Firefox の Ajit Varma は、ブラウザはすでに利用者がやろうとしていることの文脈——タブの中の調べもの、訪れたページ、その過程で見つけたもの——の多くを持っており、Smart Window ではその文脈をより役立てつつ、利用者の制御下に置いたままにする方法を探っている、という趣旨のコメントを寄せている1。
制御の実装として挙げられているのは4点だ。Smart Window は任意で使うもので、いつ使うか、どの閲覧文脈を作業に使わせるか、どのAIモデルを使うかを利用者が選び、Firefox の AI Controls から管理でき、完全にオフにもできる1。
Chromeとの対比で見えるもの
同じ週、GoogleはGemini in Chrome を米国のAndroidユーザー全員に展開し、AI Pro / AI Ultra 契約者にはタスクを代行する auto browse も開放した。片やMozillaは、ベータのまま、米国とカナダの英語のみで、渡す文脈と使うモデルを利用者に選ばせる形を出してきた1。
規模はまるで違うが、両者が扱っている問題は同じだ。ブラウザにAIを入れると、開いているタブと閲覧履歴という、かなり強い個人情報がAIの入力になる。そこをどう扱うかが製品の分かれ目になる。エージェントが利用者の意図を超えて動いた例は、英国AI Security Instituteが評価中のエージェントの逸脱を公表したときにも報告されており、何をAIに見せるかを決める設定はその手前の防波堤にあたる。
Mozillaの立て方は、Exa提携の記事のほうにより明確に出ている。業界の多くは1社がブラウザも検索エンジンもAIモデルも周辺サービスも作る方向に進んでおり、あらゆる層が手間なく感じられる魅力がある一方で、どの技術を使えるか、AIが何を返すかを1社が完全に左右することにもなる——という認識を示したうえで、自社の閉じたAIスタックを作る代わりに Exa.ai のような会社との提携に投資する、としている2。目指すモデルとして挙げているのが、見える引用と、データを保持しないというコミットメント、そして独立したブラウザエンジンだ2。
Exa.ai の共同創業者兼CEOである Will Bryk も、AI時代のために作られた検索は1社のスタックの中に閉じ込められていては機能しない、Firefox はモデルと検索とブラウザを同時に所有しようとしていない数少ないブラウザのひとつだ、という趣旨のコメントを寄せている2。なお Exa は、デスクトップの Smart Window だけでなく iOS の Quick Answers も支えることになっている2。
ブラウザをどう選ぶかという観点では、Cloudflareがエージェント専用ブラウザ「Kitesurf」をベータ公開したときとは論点が違う。あちらは「エージェントが使うブラウザ」の効率の話で、こちらは「人が使うブラウザにAIをどう同居させるか」の話だ。
社内で使うブラウザを選ぶ立場からすると、比較の軸ははっきりしている。既定でオンか、オプトインか。どの文脈が渡るのか、それを誰が決めるのか。モデルを選べるのか、固定なのか。まとめてオフにできる場所が用意されているのか。Mozillaはこの4つを製品側の設定として置いた形になる。ただし、プライバシー優先やデータ非保持は同社が掲げているコミットメントであって、外部の検証結果として示されているわけではない12。
Mozillaは今後、最近のブラウジングの経路を示したり、関連するタブと履歴をまとめて再開の起点にしたりする機能や、同じ情報を何度も入力しなくて済むようにフォーム入力を助ける機能に取り組んでいるとしている1。いずれも予定として書かれているもので、今回の提供分ではない。Smart Window 自体もベータのままで、現時点で使えるのは米国とカナダの英語だけだ1。
Sources
- Smart Window: Finish what you start online - Mozilla公式ブログ(2026年8月18日)
- Firefox and Exa: Building AI search around people, not platforms - Mozilla公式ブログ(2026年8月18日)