Microsoft、文章を生成しない判定用モデル「Microsoft-Decision-1」を公開 - 入力100万トークン$0.042、出力は無料
Microsoftが2026年10月9日、固定の選択肢ごとに確率を返す決定モデルMicrosoft-Decision-1をFoundryとOpenRouterで公開した。Qwen3.5-9Bを後学習したモデルで、質問の型はnoul・choice・scoreの3つ。料金は入力100万トークンあたり$0.042で出力は無料、入力は最大32Kトークンのテキストに限られる。
Microsoftは2026年10月9日、文章を生成せず、決められた選択肢のそれぞれに確率を付けて返すモデル Microsoft-Decision-1 を発表した。Microsoft FoundryとOpenRouterで使える1。同社は、ルーティング、分類、優先順位付け、検証、ワークフローの制御に向けて設計したと説明している。
料金は入力100万トークンあたり$0.042で、出力トークンには課金しない。ベースはAlibabaのオープンウェイトモデルQwen3.5-9Bで、Microsoftが後学習した。今後はMicrosoft AI(MAI)やOpenAIのモデルを土台に作り直す予定だという。
テキストではなく確率を返す「決定モデル」は、ここ1か月で発表が続いている。自サイトでは10月1日公開のStrands Decider 2Bと、10月6日にベータ公開されたOpenAIのDecisions APIを取り上げた。今回はMicrosoftが自社のクラウドで提供する決定モデルで、自サイトで扱うのは3本目になる。
質問は3つの型、答えに理由は付かない
リクエストには、判断材料の state と、型付きの質問を1つ以上入れる。state はテキストでもJSONでもよい。質問の型は3つある3。
- noul: 条件が真かどうか。0から1の確率で返る
- choice: 渡した選択肢から1つ選び、選択肢ごとの確率も返す
- score: 順序のある尺度で評価する。返る値は段階の番号を確率で重み付けした平均なので、4段階なら0から3の間で、段階と段階の間の値にもなる
同じ state に対する質問は1回のリクエストにまとめられる。ドキュメントの例では、問い合わせ1件について担当チームをchoiceで選び、深刻度をscoreで付け、再問い合わせかどうかをnoulで判定している。返ってくるのは数値の判定だけで、文章による理由は付かない。
型の名前は、Strands Decider 2Bが使っていた choice / noul / score と同じ語になっている。OpenAIのDecisions APIは、真偽を問う型を predicate と呼んでいる5。
呼び出し先はFoundryリソースの /providers/microsoft/v1/systemone で、model にはモデル名ではなく自分で付けたデプロイ名を入れる。認証はMicrosoft Entra ID(推奨)かAPIキーで、デプロイ種別は一部リージョンのDataZoneStandardとGlobalStandardから選ぶ。
OpenAIのDecisions APIとの違い
料金の組み立ては、OpenAIのDecisions APIと同じく入力だけに課金する形だ。OpenAIは gpt-6-luna で入力100万トークンあたり$0.10としており5、Microsoft-Decision-1の$0.042はその42%にあたる。Foundryブログの料金表では、US DatazoneとEU Datazoneのどちらも同じ単価になっている。
扱える入力には差がある。Foundryのカタログによれば、Microsoft-Decision-1はテキストのみで、画像・音声・動画は受け付けない。1回の採点で扱える入力は最大32Kトークンである4。OpenAIのDecisions APIはテキストに加えて画像も評価できるため、商品写真の損傷判定のような使い方は、今のところMicrosoft-Decision-1では置き換えられない。
置き場所も選択の分かれ目になる。手元のGPUで動かせるStrands Decider 2Bに対し、Microsoft-Decision-1はAzure上のモデルとして提供される。カタログは「Direct from Azure」に分類しており、Azureの契約と請求の中で使える。すでにAzureでモデルを運用している組織には、調達の手間が小さい選択肢と考えられる。
Microsoftの評価をどう読むか
精度と速度の数字はいずれもMicrosoft自身の計測である。同社は、学習から隔離した36のベンチマーク・約15万問で比べて最も精度が高く、計測した中で最も速かったとしている。速度は2位のH2O-Lightning-4B v1.1の2.5倍、GPT-6 Solの35倍という1。記事末尾の比較対象の一覧には、GPT-6 Luna DecisionsとStrands-Decider 2Bも含まれている。
発表記事は公開後に更新されており、編集注記によれば、Jevの精度と較正(キャリブレーション)のベンチマークを追加した。TechCrunchによれば、JevはTypeSafe AIが9月15日に公開した、テキストではなく確率を出力するモデルで、同社は評価額75億ドルで8億7,000万ドルを調達した6。発表後に比較対象が追加されるような段階の分野であり、順位の主張は発表時点のものとして読む必要がある。
社内での試用例の数字にも注意がいる。Xbox Researchが1万件超の自由記述のフィードバックをテーマ別に分類した事例について、Command Lineの記事は「GPT-6 Solと同等の品質で14倍超速く、コストは200分の1」と書き1、Foundryブログは「GPT-5と同等の品質で80〜100倍速い」と書いている2。同じ日の公式記事どうしで、比較相手も倍率も一致していない。
提供段階の表記も揃っていない。Foundryブログは「public preview」と書き、カタログのライフサイクル欄は「Generally available (GA)」となっている4。SLAやサポートの扱いが提供段階で変わる組織は、契約前に確認しておきたい。
Foundryブログ自身も、自分のワークロードの代表的な入力で精度・レイテンシ・1判定あたりのコストを比べ、確信度をしきい値に使うなら較正を自分のデータで確かめるよう勧めている。
使いどころと、ドキュメントが挙げる限界
向いているのは、同じ入力に対して範囲の決まった判断を大量にこなす処理である。問い合わせの振り分け、インシデントの優先度付け、コンテンツのフィルタ、モデル出力の採点、リクエストを処理するモデルやツールの選択といった例が挙がっている。文章を作る・要約する・説明する用途には生成型のLLMを使い、Microsoft-Decision-1で先に振り分けやゲートをかける組み合わせ方も示されている3。エージェントの中で、次の手順やツールの呼び出しを許すかどうかの判定をLLMに聞いている箇所は、置き換えを試す候補になるだろう。
一方で、ドキュメントは限界もはっきり書いている。質問や選択肢の言い回し・並び順でスコアが変わり、問いの立て方が悪くても数値は返ってくる。較正が最も効くのはなじみのあるタスクの種類である。強制的に選ばせるべきでない場面では「cannot tell」のような棄権の選択肢を入れ、選択肢の順番を入れ替えて結果が変わらないか試すよう勧めている。与信・雇用・住宅・医療・法的事項のように人に関わる重大な決定では、人による実質的な確認を前提に支援として使い、唯一の決定者にしないよう求めている3。
いま分類やルーティングを、function callingやJSON出力でLLMに1項目だけ返させる形で組んでいるなら、3つの決定モデルを同じラベル付きデータで並べて比べられる状況になった。入力がテキストだけでAzureを使っているならMicrosoft-Decision-1、画像も判定したいならOpenAI、データを外に出せないならStrands Decider 2B、という分かれ方が当面の目安になると考えられる。OpenAIはDecisions APIのGAを数週間以内と見込んでおり、そこで料金や対応モデルが変わるかどうかも比較の前提に影響する。
Sources
- Introducing Microsoft-Decision-1, our model for fast decision-making - Microsoft Command Line(2026年10月9日)
- Introducing Microsoft-Decision-1 in Microsoft Foundry for decision and classification workloads - Microsoft Foundry Blog(2026年10月9日)
- Deploy and use Microsoft-Decision-1 in Microsoft Foundry - Microsoft Learn
- Microsoft-Decision-1 - Microsoft Foundry モデルカタログ
- Decisions - OpenAI APIドキュメント(Decisions APIガイド)
- The maker of non-text AI model Jev valued at $7.5B just weeks after launch - TechCrunch(2026年10月9日)
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