Qwen3.8のウェイトが出そろう - 27BはApache 2.0、2.4兆パラメータ版は独自ライセンス

AlibabaのQwenが Qwen3.8-27B と Qwen3.8-2.4T-A95B のウェイトを公開。27BはApache 2.0、Max級の2.4兆パラメータ版は売上規模で条件が変わる独自ライセンスだった。8月5日時点で不明だった商用利用の条件が、ようやく読める形になった。

Qwen3.8のウェイトが出そろう - 27BはApache 2.0、2.4兆パラメータ版は独自ライセンス

AlibabaのAIモデル開発チームQwenが、Qwen3.8シリーズのウェイトをHugging Faceで公開しました。小型で画像・動画も扱える Qwen3.8-27B と、総パラメータ2.4兆の Qwen3.8-2.4T-A95B の2つです12

注目したいのは、2つのライセンスが分かれた点です。27Bは Apache 2.01。2.4兆パラメータ版は Apache 2.0 ではなく、「Qwen3.8-Max License」という独自ライセンスでした23。当サイトが8月3日のQwen3.8-Max正式リリースを扱った記事では、「商用利用の可否を判断できる情報は現時点では出ていません」と書きました。その部分が、ようやく条文として読める形になっています。

27B: Apache 2.0の小型マルチモーダルモデル

Qwen3.8-27B は、パラメータ27B・層数64・隠れ次元5,120の密なモデルで、種別はモデルカード上「ビジョンエンコーダを備えた因果言語モデル」とされています1。画像と動画をネイティブに理解でき、Qwenは対象として「STEMの図表や文書から時間規模の動画まで」を挙げています1。コンテキスト長はネイティブ262,144トークンで、100万トークンまで拡張できるとしています1

アーキテクチャは、線形アテンションの Gated DeltaNet と Gated Attention を組み合わせたハイブリッド構成です1。土台はQwen 3.5のアーキテクチャで、この点は2.4兆パラメータ版と共通しています12

推論の制御方法も整理されています。thinkingモードは既定でオンですが、リクエスト単位で無効化でき、reasoning_effort で深さを xhigh(既定)・mediumlow の3段階に調整できます1。過去のメッセージの推論文脈は preserve_thinking で保持されます1。デプロイは Hugging Face Transformers、vLLM、SGLang、TokenSpeed などに対応するとされています1

なおQwenは、より多くの本番向け機能(既定で100万トークンのコンテキスト、公式のビルトインツールなど)を備えたホスト版の27BをQwen Cloudで提供予定としていますが、モデルカードの記載では「coming soon」で、まだ始まっていません1

ベンチマークは項目ごとに勝ち負けが割れている

モデルカードには比較表が載っています。ただし、これらはいずれもQwen自身が測定・掲載したもので、独立検証ではありません。比較列としてQwenが並べたのは Qwen3.6-27B、Qwen3.7-Plus、Muse Glimmer-30B、Opus4.6 Max です1

コーディング・エージェント系の主な数値は次のとおりです1

ベンチマークQwen3.8-27BQwen3.6-27BQwen3.7-PlusOpus4.6 Max
Terminal Bench 2.1 (Terminus)73.063.464.078.2
SWE-bench Pro61.753.557.653.4
NL2Repo-Bench42.336.241.147.6
DeepSWE 1.142.213.314.2
LiveCodeBench v690.383.989.688.8
OSWorld-Verified(コンピュータ操作)84.363.973.372.7
GPQA Diamond89.287.890.391.3
HLE30.824.034.740.0

前世代の Qwen3.6-27B からの伸びは、DeepSWE 1.1 の 13.3 → 42.2 のように大きい項目があります1。一方、Opus4.6 Max との比較は項目ごとに割れており、SWE-bench Pro や OSWorld-Verified では上回る数値が出ている反面、Terminal Bench 2.1・NL2Repo-Bench・GPQA Diamond・HLE では下回っています1。「小型モデルが上位モデルを追い抜いた」とまとめられる内容ではありません。

条件の非対称にも注意が必要です。SWE-bench Pro については、Opus4.6 Max のみ公式発表値を使い、それ以外はClaude Codeのハーネスで測定したとフットノートに書かれています1。また表には QwenSWEBench(79.0)や CoWorkBench(70.7)といった数値も並んでいますが、これらはQwenの自社ベンチマークであることが原文に明記されています1。他社との比較を読むときは、この2種類を分けて見る必要があります。

2.4兆パラメータ版: 配られたウェイトとクラウド版は同じものではない

Qwen3.8-2.4T-A95B は総パラメータ2.4兆・アクティブ950億、層数92、MoEのエキスパートは512で、トークンあたりルーテッド10+シェアード1が動きます2。コンテキスト長はネイティブ262,144トークン、1,010,000トークンまで拡張可能とされています2。モデルカードは「Qwen-Maxクラスのモデルをオープンリリースするのは初めて」としています2

ここで見落としやすいのが、公開されたウェイトとクラウドで提供されている製品が同一ではない点です。モデルカードには、Qwen3.8-Max が「Qwen3.8-2.4T-A95B をベースにした公式版で、画像入力やnon-thinking対応、既定で100万トークンのコンテキスト、公式のビルトインツールなど、より多くの機能を備える」と書かれています2。これらがクラウド版の「追加された機能」として書かれている以上、ウェイトを自前で動かす場合には画像入力やnon-thinkingは含まれないと読むのが自然です。クラウド版で評価してから自社環境に持ち込むような進め方をすると、想定と実物がずれる可能性があります。

対応フレームワークの記載も27Bとは異なり、こちらは vLLM、SGLang、TokenSpeed などとされ、Hugging Face Transformers は挙げられていません2

Qwen3.8-Max Licenseは何を求めているか

独自ライセンスと聞くと使いにくい印象を受けますが、条文の骨格自体は広い許諾です。使用・複製・改変・結合・公開・配布・サブライセンス・販売・デプロイ・ホスティング・ファインチューニング・派生物の作成が、無償で認められています3。その上で、2つの条件が付いています3

1つ目は表示義務です。月間アクティブユーザーが1億を超える、または月間売上が2,000万米ドルを超える商用の製品・サービスで使う場合、当該モデル名をその製品・サービスのUI上に目立つ形で表示しなければなりません3

2つ目は、事業の種類と規模による別途ライセンスの取得です。ライセンシーまたはその関連会社が「Model as a Service」または「AI Work Assistant」の事業を営んでおり、連続する12か月間の合計売上が5,000万米ドルを超える場合、商用目的で使う前にQwenから別途ライセンスを取得する必要があります3。ただし、ライセンシーの内部利用には適用されません。ソフトウェアやその出力、基盤となるモデルの能力を第三者に利用可能にしない場合に限る、という条件付きです3

この2つの用語には定義が置かれています。「Model as a Service」は、APIやホストされたエンドポイントなどを通じて第三者に推論やファインチューニングへのアクセスを与え、入力・パラメータ・訓練データに実質的な制御を及ぼせるようにすることを指し、他社がホストするモデルへのリクエストを中継するだけのものは含まれません3。「AI Work Assistant」は、AI支援のコーディングまたはオフィス生産性を主目的とする独立したAI製品を指し、条文はその例として Qoder と QwenWork を挙げています3。単機能のAIツール(AI翻訳など)、コーディングやオフィス生産性以外の領域向けのアシスタント、主目的がそれ以外の製品の一機能として組み込まれたアシスタントは含まれない、と除外も明記されています3

このほか、無保証条項と、適用法令の遵守および第三者の知的財産を侵害しないことを求める条項があります3

採用を検討するときに見る順番

7月19日のプレビュー発表の時点では、ベンチマーク・ライセンス・公開時期のいずれも未公表でした。8月3日にベンチマークと価格が出て、今回ウェイトとライセンスが出たことで、判断材料は一通りそろったことになります。

自社で動かす前提であれば、まず見るべきはモデルの性能よりライセンスの側です。社内の業務でモデルを使うだけであれば、条件2は内部利用の除外に当たる可能性がありますが、自社の使い方が「第三者に利用可能にしていない」と言えるかは、条文と実際の構成を突き合わせて確認する必要があります。APIとして外部に提供する、あるいはAIコーディング製品やオフィス生産性製品に組み込んで売る事業であれば、定義と売上基準の両方に自社が当たるかを、契約の担当者を交えて確認しておくのが安全です。

一方、27Bの Apache 2.0 は、こうした条件分岐がない点でそのまま扱いやすい選択肢です。密な27Bで画像・動画まで扱え、262,144トークンのコンテキストを持つモデルが制約の少ないライセンスで手に入ることは、オンプレミスや閉じたネットワークでの検証を進めやすくします。LG AI ResearchのK-EXAONE 2.0がApache 2.0で公開されたときと同様、条件が明示されて初めて業務での採用可否が決まる部分です。

公開のタイミングにも各社の判断の差が出ています。Z.aiはGLM-5.3のウェイト公開を、安全性評価とハードニングの完了を待って2週間後にすると発表しました。Qwenの側は、前掲の8月3日の発表でウェイト公開を「来週」と予告していました。Hugging Face上のリポジトリが最後に更新されたのは、2.4兆パラメータ版が8月12日、27Bが8月14日です(いずれもUTC、確認日2026年8月16日)12

Hugging Face上の反応にも差が出ています。確認時点で27Bはダウンロード91,917件・いいね9,734件、2.4兆パラメータ版はダウンロード6,381件・いいね963件でした12。公開時刻が2日ずれているため単純に並べることはできませんが、自前で動かせるサイズかどうかが数字に効いていると考えられます。2.4兆パラメータのモデルを自社で推論に載せられる組織は限られており、Max級のウェイトが公開されたこと自体の意味は、多くの読者にとっては「動かせるようになった」ことより「中身と条件が確認できるようになった」ことのほうに近いはずです。

Sources

  1. Qwen/Qwen3.8-27B - Qwen公式のモデルカード(Hugging Face)
  2. Qwen/Qwen3.8-2.4T-A95B - Qwen公式のモデルカード(Hugging Face)
  3. Qwen3.8-Max License - Qwen公式のライセンス本文

最新のAIニュースを毎日お届けしています。

RSSで購読する 更新をいち早くチェックできます。

他のキーワードで探す →