Disney・Universal・Warner Bros.から著作権侵害で提訴されている画像生成AIのMidjourneyが、原告スタジオ側の「社内でのAI利用」に関する資料の開示を求めて攻勢に出ています。Midjourneyは2026年6月29日、スタジオ側の開示義務を狭く限定したマジストレイト判事の命令の見直しを、カリフォルニア中部地区連邦地裁のJohn A. Kronstadt判事に申し立てました1。審理は8月17日に予定されています1。
この訴訟は、DisneyとUniversalが2025年にMidjourneyを著作権侵害で提訴し、Warner Bros.も同年中に追随したものです2。スタジオ側は、MidjourneyのAI画像ツールが自社の著作権キャラクターを複製・模倣するコンテンツの生成を可能にしていると主張しています2。
争点は「開示の範囲」- 6月15日命令が消費者向けに限定
今回の申立ての直接のきっかけは、2026年6月15日にマジストレイト判事A. Joel Richlinが出した命令です。同判事はMidjourneyの開示請求を一部認めたものの、スタジオ側が開示すべき資料を「消費者向け(consumer-facing)」のAI利用に限定し、それ以外の資料はMidjourneyの侵害責任の判断には無関係として退けました13。
Midjourneyはこの限定を不服とし、連邦民事訴訟規則72条(a)に基づいて地区判事による見直しを求めています1。現行の枠組みでは、スタジオが「市場への損害の主張を裏付けると考える文書だけを選んで出せてしまう」というのがMidjourneyの言い分です2。
事業計画からモデルウェイトまで - Midjourneyが求める資料
報道によると、Midjourneyが開示を求めているのは、スタジオのAI事業計画や研究レポート、AIの学習データセット、モデルウェイト、取締役会向けのプレゼン資料など、社内のAI活用の実態を示す広範な資料です3。さらに、スタジオ自身がMidjourneyのプラットフォームで入力したプロンプトとその生成結果についても、侵害を主張する画像に限らず全体の開示を求めています23。映画やTV番組の「ストーリーボード作成やアイデア出し」のために社内でAIを開発・利用している証拠も対象です2。
Midjourneyは申立ての中で、スタジオが「差し控えている文書はまさに、彼らが密室で、Midjourneyを訴えている行為とまったく同じことをしているかどうかを明らかにするものだ」と主張しています2。同社は、公開されている画像でのAI学習はフェアユースになりうるという立場で、スタジオ自身のAI利用実態は、フェアユースの抗弁と、自らも同様の行為をしている者は救済を求められないとする「アンクリーンハンズ」の抗弁の両方を裏付けると論じています3。
スタジオ側の立場と、逆方向の開示合戦
スタジオ側の筆頭代理人David Singer弁護士は、スタジオは「AI技術を止めることも、Midjourneyのビジネスを畳ませることも求めていない」とし、求めているのは「映画とTV番組のコピーをやめること」だと反論しています2。
一方で、開示をめぐる攻防は双方向で進んでいます。裁判所の記録によると、スタジオ側もMidjourneyに対して、画像生成モデル「V8」の学習ソースコードと関連リポジトリの開示を求める申立てを行っており、Midjourneyは6月22日、David Holz CEOの宣誓供述書などを添えて反対書面を提出しました1。互いに相手の「AIの中身」に踏み込もうとする構図です。
AI著作権訴訟の行方を左右する審理へ
生成AIと著作権をめぐる訴訟は多数進行していますが、この事件は世界最大級のコンテンツ企業群と主要な画像生成AI企業が直接対決する代表例です。「訴える側の企業も社内でAIをどう使っているのか」という論点が開示手続きの正面に出てきたことで、判断次第では、コンテンツ企業がAI企業を訴える際に自社のAI利用実態の開示リスクを負うという前例になる可能性があります。生成AIを業務に取り入れつつ権利保護も重視する企業にとって、AI生成コンテンツの著作権をめぐる議論の実務的な着地点を占う材料になると考えられます。
Kronstadt判事による審理は8月17日に予定されており、両者の非公式なディスカバリー会議も7月14日に行われる予定です1。
Sources
- Disney Enterprises Inc. v. Midjourney Inc., 2:25-cv-05275 - Docket - CourtListener(連邦地裁ドケット)
- Midjourney wants Hollywood studios to reveal the details of their AI usage - TechCrunch
- Midjourney Asks Court to Expand Studio AI Discovery - WinBuzzer