Google DeepMindは2026年7月30日(米国時間)、ロボット向けAIモデルの新世代「Gemini Robotics 2」ファミリーを発表した1。視覚と言語の入力をモーター制御に変換するVLA(ビジョン・言語・アクション)モデル「Gemini Robotics 2」、ロボットの頭脳としてタスクの進行を管理する具体化推論モデル「Gemini Robotics ER 2」、ロボット上でローカル動作する「Gemini Robotics On-Device 2」の3本立てだ。
これまでのDeepMindのロボティクスモデルが人型ロボットの上半身の制御にとどまっていたのに対し、Gemini Robotics 2は歩行を含む全身の運動に対応範囲を広げた1。人型ロボットが歩き、かがみ、手を伸ばして散らかった部屋を片付ける——そんな一連の動作を1つのモデルが担う。
上半身から全身へ、単体から「群れ」へ
今回の発表で変わる点は大きく3つある。第一が全身制御だ。DeepMindは、人型ロボットが歩く・かがむ・物を操作するといった動作を組み合わせて散らかった部屋の片付けをこなす例を挙げている1。同社が報告する成功率は、グリッパー型ロボットでの一般的な物のつかみ置きが74.2%、工具のキッティング(仕分け配置)が78.9%、精密な挿入作業が89.6%1。多指ハンド(SharpaWave)では電球を回して外すタスクで92%に達する一方、3〜4割台にとどまるタスクもあり、器用さの課題はまだ残る1。
第二が複数ロボットの協調だ。種類の異なるロボット同士が通信しながら同じ空間で協働し、複雑なワークフローを分担できるようになった12。これを支えるのがER 2で、連続的な映像から自らの作業の進捗を追跡し、問題が起きれば手順を組み直して自己修正する2。DeepMindはER 2を前世代のER 1.6からの大幅なアップグレードと位置づけ、進捗分類タスクで57.4%の精度、映像内の瞬間検出で91.3%の精度、実行速度は4倍と報告している2。
第三がオンデバイス化だ。On-Device 2はファミリー中で最も効率的とされるVLAで、ネットワークを介さずロボット本体で動く1。新しい双腕ロボットへの適応も、通常200例未満のデータと数時間の調整で済むという1。ロボットの機種ごとにゼロから学習し直す必要が薄れれば、マルチモーダルAIを物理世界に持ち込むコストは下がっていく。
開発者が今すぐ触れるのはER 2
3モデルのうち、一般の開発者にいま公開されているのはER 2だけだ。Gemini APIとGoogle AI Studio経由で利用でき、企業向けにはGemini Enterprise Agent Platformのプライベートプレビューが用意される2。全身制御を担うGemini Robotics 2本体とOn-Device 2は早期アクセスパートナーへの提供にとどまる1。発表ではパートナーとしてApptronik、Boston Dynamics、Agile Robotsの名前が挙がっており1、まずはこれらのパートナーの現場が最初の実験場になる。
訓練には人間による遠隔操作のデータ、動画の実例、シミュレーションが使われたと報じられている3。一般消費者向けロボットへの搭載時期は示されておらず、DeepMindロボティクス責任者のCarolina Parada氏も報道の中で安全性の問いがより切実になると述べるなど、展開はまだ初期段階だ3。
安全面では、物理的な安全対策とAIの安全フレームワークを組み合わせた多層アプローチを採り、人の接近を検知して安全ツールを呼び出しロボットを停止させる仕組みや、エージェント的な安全判断を測る新ベンチマーク「ASIMOV-Agentic」も導入された1。
フィジカルAI競争は「基盤モデル×ハードウェア」の陣取りに
ソフトウェア側の基盤モデルと、ロボットというハードウェアの組み合わせを巡る競争は今年に入って急速に立ち上がっている。NVIDIAは7月に日本でフィジカルAIエコシステムの本格展開を発表し、エッジ向け4Bモデル「Cosmos 3 Edge」を軸にトヨタ・ファナック・ソニーら20社超の連合を組んだ。ハードウェア側では中国Unitree Roboticsが低価格の人型・四足ロボットで量産を先行させている。
DeepMindの今回の一手は、この構図に「Geminiのマルチモーダル能力を継承した基盤モデル」を投じるものだ。同社は今月、Gemini 3.6 Flash系の低価格モデル群でエージェント運用向けのラインアップを固めたばかりで、デジタルのエージェントと物理のロボットの両面でGeminiを共通基盤に据える戦略が鮮明になった。
自社でロボット導入を検討する立場なら、現時点で試せるのはER 2のAPIまでで、全身制御の実力はパートナー企業のデモを通じて見えてくる段階にある。一方で、機種適応が数時間・200例未満というOn-Device 2の数字が実運用でも再現されるなら、工場や倉庫でのロボット導入の前提コストが変わる。まずはER 2で「ロボットに仕事の段取りをさせる」部分だけでも触っておくと、この分野の進み方を体感しやすい。
Sources
- Gemini Robotics 2 brings whole body intelligence to robots - Google DeepMind公式ブログ
- Introducing Gemini Robotics ER 2 - Google公式ブログ(The Keyword)
- Google’s new Gemini Robotics 2 platform allows for ‘intelligent whole-body control’ - Engadget