Googleが2026年8月5日、Sundar Pichai CEOのメモを公式ブログに掲載し、AI部門の体制変更を明らかにしました3。Google DeepMind(GDM)を率いてきたDemis Hassabis氏は同部門のChairとAlphabetのChief Scientistに就き、Isomorphic Labsの指揮は継続します1。日々の運営は、GDMのChief Technology Officerであり GoogleのChief AI ArchitectでもあるKoray Kavukcuoglu氏が、SVP of Google DeepMindとしてPichai氏の直属で引き継ぎます1。
同じメモで、27年間在籍したJeff Dean氏の退社も告げられました1。Dean氏はSanjay Ghemawat氏らとともに、Discovery Loopという新会社を立ち上げます12。
誰が何を見る体制になるのか
Kavukcuoglu氏が統括するのは、Geminiのモデル開発、Frontier AI研究、そしてGeminiアプリと開発者向けチームです1。Pichai氏はメモで「現在のGDMのChief Technology Officerであり、われわれのChief AI ArchitectであるKorayが、SVP of Google DeepMindに上がり、私に直属する」と書いています1。同氏はDeepMindの初期から在籍し、13年間でディープラーニングチームを立ち上げたと紹介されています1。
つまり、Gemini 3.6 Flashのようなモデル投入やGemini APIのマネージドエージェントといった、開発者が日々触れる部分の意思決定はKavukcuoglu氏の側に移ります。
Hassabis氏側の説明はこうです。「私は生涯AGIに向けて取り組んできた。そしていま、多くのみなさんと同じように、それが手の届くところにあると感じている」1。新しい役割については「戦略的・グローバルなAGIの問題についてSundarと緊密に働き続け、(中略)GDMのリードたちに助言する」と述べています1。Geminiについては「Geminiモデルは、Korayとリードたちの手で安心して任せられる」としています1。報道では、Hassabis氏が日々の運営責任から退く形と説明されています3。
役職の並びだけを見ると降格のようにも読めますが、Alphabet全体のChief Scientistという肩書きが新たに付き、Isomorphic Labsの指揮も残ります1。少なくとも公表された範囲では、研究・長期戦略の側に軸足を移す再配置です。
Pichai氏はメモの中で、Geminiアプリが月間9億5,000万人以上に達し、Gemmaモデルのダウンロードが累計9億回を超えたことにも触れています1。ロボティクス向けモデルまで含めて手を広げてきた事業を、日々の運営と長期研究に分ける判断だと読めます。
Jeff Dean氏が立ち上げるDiscovery Loop
Dean氏の退社について、Pichai氏は「27年という素晴らしい期間を経て、Jeff Deanは何か新しいことを試したい時期に来ている」と書いています1。新会社については「JeffとSanjay Ghemawatは、ML・科学・工学における発見を加速するための、独立した公益法人(public benefit corporation)を立ち上げる」と説明されています1。
Googleとの関係は切れません。メモには「創業時の出資者(founding investor)およびCloudパートナーとして協働を続け、MLシステムと関連インフラの進歩に向けた研究の枠組みでも協業する」とあります1。退社した研究者の新会社に、元の勤務先が出資し計算資源も提供するという形です。
新会社のサイトによると、Discovery Loopは「機械学習・科学・工学における重要な問題を自動的に解けるAIソリューションを構築している」会社で、「最初は機械学習の研究とエンジニアリングのプロセスの自動化に注力する」としています2。創業メンバーとして挙げられているのはDean氏、Ghemawat氏、Quoc Le氏、Oriol Vinyals氏の4名で、サイトは彼らを「AI分野で最も引用されている研究者のうち3名と、分散システム分野で最も引用されている研究者のうち2名」と位置づけています2。Pichai氏のメモが名前を挙げているのはDean氏とGhemawat氏の2名ですが、Vinyals氏についても「Geminiの共同リードであるOriol Vinyalsも、Deanに合流するためGoogleを離れる」と報じられています3。
最初の対象が「機械学習の研究とエンジニアリングのプロセスの自動化」である2という点は、そのまま読めば、AI開発の作業自体をAIにやらせるところから始めるということです。何をいつ提供するのかはサイトに書かれておらず、現時点で分かるのは事業の方向と顔ぶれまでです。
業務にどう効くか
短期的には、Geminiを使っている読者の手元で何かが変わるわけではありません。今回発表されたのは組織と役職の話で、モデルの提供条件や価格に関する記述はメモにありません。
見ておくとよいのは、意思決定者が代わった後に何が優先されるかです。Kavukcuoglu氏の担当範囲には、モデル開発とアプリ・開発者向けチームの両方が含まれます1。研究成果を製品に落とす速度が変わる可能性はありますが、それは今後の発表で判断するしかありません。マルチエージェントの安全性研究への拠出のような長期の取り組みが、Hassabis氏の新しい役割の下でどう扱われるかも同様です。
もう一つは人材の流れです。Googleの中核にいた研究者が独立し、その会社にGoogle自身が出資してCloudを供給する1。研究の担い手が大企業の外に出つつ、計算資源の供給元としては大企業に依存するという構図が、今回また一つ増えたことになります。
Sources
- The next chapter of our AI momentum - Google公式ブログ(Sundar Pichai氏のメモおよびDemis Hassabis氏のメッセージ)
- Discovery Loop - Discovery Loop公式サイト
- Demis Hassabis no longer DeepMind CEO to focus on new AGI role, Jeff Dean departs - 9to5Google(2026年8月5日)