東京大学松尾研究室からスピンアウトした新たなAI企業「Third Intelligence株式会社」が2025年3月27日に設立されたことが発表された1。同社は「人間の脳でも、従来のAIでもない第三の知能」の創造を掲げ、AGI(汎用人工知能)の実現を目指すとしている。
同社は資本金1000万円で東京都文京区に本社を構え、東京大学大学院工学系研究科の松尾豊教授がChief Scientist、石橋純也氏がCEOに就任した1。松尾研究室はこれまで多数のスピンアウト企業を輩出してきた実績があり、深層学習や大規模データ解析の分野で先端的な研究を続けている3。
「第三の知能」というビジョン
Third Intelligenceが掲げる「第三の知能(Third Intelligence)」は、人間の知能と従来のAIシステムの限界を超える新たな形の知能体を意味している2。同社は「考え、対話し、行動し、成長する人間のようなAI」の開発を目標に掲げており、これは現在のLLMやマルチモーダルAIとは根本的に異なるアプローチを示唆している。
現在のAIシステムが特定のタスクに特化した「狭いAI(Narrow AI)」であるのに対し、Third Intelligenceが目指すAGIは人間のように幅広いタスクを学習・実行できる汎用的な知能システムとなる。この領域では米国のOpenAI、Anthropic、Google DeepMind、中国のBaiduやアリババなどが激しい競争を繰り広げている。
松尾研究室のAI研究基盤
Third Intelligenceの技術的基盤となる松尾研究室は、ワールドモデル、ロボティクス、大規模言語モデル、脳-AI研究の4つの重点領域で研究を展開している3。特にワールドモデル研究は、AIが外界を理解し予測する能力の向上に重要な役割を果たしており、AGI実現への鍵となる技術の一つとされている。
同研究室では「知能を創る」「パイオニアを育てる」という2つのミッションを掲げ、最先端研究、質の高い教育、社会実装、技術インキュベーションを連携させたエコシステムの構築を進めてきた3。これまでに多数の学生起業家を支援し、産学連携研究を通じて研究成果の社会実装を促進している。
グローバル競争への参戦
同社は「米中に対抗する第三極」としての位置づけを明確にしており、既存システムの制約にとらわれない新たなAI開発を目指すとしている1。現在のAGI競争では、OpenAIのGPTシリーズ、GoogleのGemini、AnthropicのClaudeなどが先行しているが、これらとは異なるアプローチでのブレークスルーを狙っている可能性がある。
Third Intelligenceは積極的な国際人材獲得と国際基準の研究開発環境整備を計画しており1、グローバル市場での競争力確保を重視している。日本のAI企業として、独自性のある技術開発と国際展開の両立が課題となりそうだ。
日本のAGI開発における意義
日本におけるAGI開発企業の誕生は、AI分野での国際競争力強化の観点で重要な意味を持つ。現在、AGI開発をリードするのは主に米国企業であり、日本発の汎用AI技術の登場は技術的多様性の確保にもつながると考えられる。
松尾研究室という強固な学術基盤を持つThird Intelligenceが、どのような技術的アプローチでAGI実現に挑むかは業界全体の注目を集めている。同社の今後の技術発表や研究成果は、日本のAI研究の方向性を占う重要な指標となりそうだ。
同社は従業員11-50名規模でスタートし、AIリサーチャーやエンジニアの積極的な採用を進めているとされる4。元ペアーズCEOでMatch Group東アジアGMを務めた石橋純也氏がCEOに就任したことで、技術開発と事業展開の両面での経験が結集されることになる。
Sources
- 松尾研発のAGI企業「Third Intelligence」設立 - PR TIMES公式発表
- Third Intelligence公式サイト - 企業概要・ビジョン
- 松尾研究室について - 東京大学松尾研究室公式サイト
- Third Intelligence LinkedIn - 企業情報・採用情報
関連リンク
- Third Intelligence Twitter - 公式Twitter