米政府、行政機関の文書から「AI」の語を外す大統領令14434 - 続いて「Super Intelligence Force」の設置を投稿で表明
2026年9月29日の大統領令14434が、行政機関に「Artificial Intelligence」「AI」の代わりに「Super Intelligence」「SI」を使うよう指示した。定義は現行法のAIの定義を引き継ぐ。続いてSuper Intelligence Forceの設置が本人の投稿で表明された。
2026年9月29日に署名された大統領令14434は、米国の行政機関に対し、「Artificial Intelligence」「AI」の代わりに「Super Intelligence」「SI」を使うよう指示している1。対象は公式な書簡、対外的なコミュニケーション、ウェブサイト、報告書、政策文書、その他の非法定文書である。
この命令の政策宣言は、用語を置き換えるだけにとどまらない。法が許す最大限の範囲で行政部門はこの2語を使い、「あらゆる該当する場面で『Artificial Intelligence』『AI』の使用を認めない」としている1。ホワイトハウスのファクトシートも、全省庁に対し両語を「もはや認めない」よう指示するものだと要約している2。
あわせて、トランプ大統領は自身のソーシャルネットワークへの投稿で「Super Intelligence Force(SIF)」の設置を表明した3。TechCrunchはこれを日曜午前の投稿として報じており、同誌の掲載日は10月4日である4。
命令が変えるもの、変えないもの
大統領令の指示は文書の種類で切られている。変える対象は、上に挙げた非法定文書である。一方で、すでに出された規則、大統領行為、契約、助成、その他の過去の文書については、書き換えを求めないと明記されている1。
定義も現行法から動かない。命令は、「Super Intelligence」「SI」が合衆国法典第15編9401条(3)で定義される「artificial intelligence」に含まれる技術とシステムを指すと書いている。この定義は、後続の大統領行為か議会の法律で置き換えられるまで有効だとしている1。つまり、語は差し替わるが、指している対象は法律上のAIの定義のままである。
その法律側をどうするかも命令に入っている。署名から60日以内に、大統領科学技術補佐官(APST)が「Super Intelligence」「SI」の連邦レベルの定義を作るための立法文言案を大統領に提出する、という指示である1。提出物には、既存の法定定義を修正・拡張・置き換えるべきかの評価、「artificial intelligence」「AI」への既存の法律上の参照に対する整合修正案、定義を行政部門全体で実施するために必要な追加の措置の勧告を含めるとされている。署名日から数えると、この期限は2026年11月28日になる。
命令の末尾には、いかなる当事者に対しても法的に執行可能な権利や利益を創設するものではないという条項が入っている1。用語の統一は行政内部の運用指示であり、民間に義務を課すものではない。
書き換えはすでにファクトシート自身に及んでいる
言い換えがどう運用されるかは、同日のファクトシートを読むと見当がつく。過去の施策を列挙した箇所で、一般名詞としての語が「SI」に置き換わっている。バイデン政権の政策を「harmful SI policies」と書き、2025年7月の「America’s AI Action Plan」については、固有名の「AI」は残したまま、その内容を「SIレースに勝つため」「SIのイノベーションの加速」「米国のSIインフラの構築」と説明している2。
同じ文書の中で、固有名の「AI」と一般名詞の「SI」が並んでいる状態である。命令が過去文書の書き換えを求めていないことと合わせると、制度や計画の名前は「AI」のまま、それを説明する地の文は「SI」という書き分けが、しばらく残ると考えられる。
ファクトシートは、2026年3月に「National Super Intelligence Policy Framework」を公表したこと、科学・医療・エネルギー・製造の進展のためにSIを活用する国家的取り組みであるGenesis Missionに50億ドル超を公表したことも挙げている2。
投稿で表明されたSIFの中身
SIFについては、現時点で確認できる一次的な記述が本人の投稿だけである。whitehouse.govのPresidential Actions一覧とサイト内検索では、2026年10月5日時点でSIFに対応する大統領令・覚書が見当たらない。以下はいずれも投稿で述べられた内容である3。
投稿は、SIFの任務を「米国がSuper Intelligenceで世界を先導し続けることを確実にするため、連邦政府の取り組みを調整すること」だとしている。調整の相手として挙げているのは、消費者、公益団体、宗教団体、重要インフラ事業者、そしてSuper Intelligence企業である。
率いる顔ぶれとして投稿が列挙しているのは、国家情報長官のJay Clayton氏、連邦取引委員会(FTC)委員長のAndrew Ferguson氏、研究・エンジニアリング担当の国防次官(Under Secretary of War for Research and Engineering)兼最高技術責任者のEmil Michael氏、人事管理局(OPM)長官のScott Kupor氏である。報告先は大統領と首席補佐官のSusie Wiles氏だとしている。
投稿はまた、SIFの設置を「White House Accord on Super Intelligence」に続くものと位置づけ、そこで主要なテクノロジー企業が集まり米国民に対する責任を確認したと述べている3。この協定については、whitehouse.govに全文や概要の掲載が見当たらないため、署名企業や協定の内容はここでは扱わない。
列挙された肩書きから読めること
投稿が挙げた4人の肩書きは、情報コミュニティ(国家情報長官)、競争・消費者保護の当局(FTC委員長)、国防の研究開発(国防次官兼CTO)、連邦職員の人事(OPM長官)と、担当領域が重ならない。調整の相手として消費者・公益団体・宗教団体・重要インフラ事業者・Super Intelligence企業が並んでいることと合わせると、業界との窓口を省庁横断の体裁でまとめる構想だと考えられる。
ただし、投稿には、権限の根拠、予算、意思決定の手続き、既存の組織との関係が書かれていない。
投稿にない部分は、いまのところ報道が埋めている。TechCrunchはWall Street Journalの報道として、Clayton氏がSIFの委員長を務め、Ferguson氏・Michael氏・Kupor氏の3人が副委員長に就くと伝えている。同誌はまた、このタスクフォースがAIのリスクと機会についての報告書をまとめる期間が120日とされること、憲章には、SIによって可能になる社会への脅威に対処する計画を作る一方で、イノベーションと競争を妨げる過剰規制や規制の虜を防ぐという趣旨の記述があるとされることを伝えている4。いずれもWSJ経由の伝聞として書かれており、2026年10月5日時点でホワイトハウスのPresidential ActionsにもFact Sheetsにも、これを裏づける文書は見当たらない。
用語が変わるときに効いてくること
この政権のAI関連の行政命令としては、2026年6月2日の大統領令14409がモデル公開前の自主的な審査枠組みを指示し、その枠組みが8月に組み上がった段階まで来ていた。14434はこれらと違い、審査や義務の中身ではなく用語の統一を命じるものである。
実務で先に効くのは検索と対応付けだろう。連邦政府の調達仕様書、ガイダンス、省庁のウェブページを追っている場合、今後出る文書では「AI」で引っかからないものが増える。過去文書は書き換えられないため、同じ制度について「AI」で書かれた規則と「SI」で書かれた説明が並存する。社内で政府文書を参照するドキュメントを持っているなら、両方の語を拾う形に直しておくほうが安全である。
地域差も開く方向にある。カリフォルニア州の行政命令やEUのAI Act透明性義務のガイドラインは、いずれも「AI」という語で制度を組んでいる。連邦の非法定文書だけが別の語に移ると、同じ事業について書く文書の語彙が、提出先ごとに変わることになる。
法律側の語をどうするかは、11月28日が期限の立法文言案で輪郭が見える。そこで既存の法定定義を置き換える案が出るのか、併記にとどまるのかが、用語の二重化がいつまで続くかを決めることになる。
Sources
- Inaugurating The Era Of Super Intelligence (Executive Order 14434) - ホワイトハウス公式(2026年9月29日)
- Fact Sheet: President Donald J. Trump Inaugurates The Era of Super Intelligence - ホワイトハウス公式ファクトシート(2026年9月29日)
- Super Intelligence Force の設置に関する投稿 - Truth Social(@realDonaldTrump)
- Trump unveils his new Super Intelligence Force - TechCrunch(2026年10月4日)
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