SpaceXAIは2026年7月8日、新しいフラッグシップモデル「Grok 4.5」を発表しました1。コーディング、エージェントタスク、ナレッジワークに向けた同社最強のモデルと位置づけられており、AIコーディングエディタのCursorと共同でトレーニングされた初のモデルでもあります12。SpaceXが今年xAIを吸収合併し、6月に史上最大規模のIPOを果たしてから初のモデルリリースとなります34。
Elon Musk氏はGrok 4.5を「Opus級のモデルだが、より速く、トークン効率が高く、低コスト」と表現しています3。価格は100万トークンあたり入力2ドル・出力6ドルで、Grok Build、Cursorの全プラン、SpaceXAIのAPIコンソールで即日利用できます1。
ベンチマークの数字をどう読むか
SpaceXAIが公開したベンチマーク結果では、実務的なソフトウェアエンジニアリング課題を測るDeepSWE 1.0(各社推奨ハーネスでの実行)でGrok 4.5は62.0%を記録し、Claude Opus 4.8(max、55.75%)を上回りました。ターミナル操作のTerminal Bench 2.1でも83.3%と、GPT 5.5(xhigh、83.4%)にほぼ並んでいます1。
一方で、同じ自社掲載のチャートでも、4つのコーディング系ベンチマークすべての首位はAnthropicのClaude Fable 5(max)です。第三者のDataCurveが運営するハーネスで測定したDeepSWE 1.1では、Grok 4.5は53%で、Fable(70%)、GPT 5.5(67%)、Opus 4.8(59%)を下回る結果も併記されています1。Musk氏自身も社内評価について「Opus 4.7とおおむね同等だが、はるかに速い」と述べており3、最高性能ではなく「上位クラスの性能を速度と価格で」という位置づけが実態に近いと考えられます。測定条件によって順位が入れ替わる例としても興味深いデータで、ベンチマークの数字の読み方はAIベンチマークの解説記事で詳しく扱っています。
「トークン効率」という競争軸
今回の発表でSpaceXAIが強調するのは、絶対性能よりも効率です。Grok 4.5は80 TPS(トークン/秒)の高速サービングに加え、「同じタスクに対して主要モデルの2倍のトークン効率」を主張しています1。具体的には、SWE Bench Proのタスク解決に要した平均出力トークンが15,954で、Opus 4.8(max)の67,020に対して約4.2分の1だったとしています1。
APIの従量課金では出力トークン数がそのままコストになるため、単価の安さ(入力$2/出力$6)と消費トークンの少なさが掛け算で効いてくる、というのが同社の訴求です。エージェントに長時間のタスクを任せる使い方が広がるなか、モデル選定の基準が「1回の応答の質」から「タスク完了あたりのコストと時間」に移りつつあることを象徴する発表と言えます。
Cursorとの共同開発が意味するもの
Grok 4.5はmixture-of-experts(MoE)構成のモデルで、数万基のNVIDIA GB300 GPUでトレーニングされました12。特徴的なのは、トレーニングに数兆トークン規模のCursorの利用データ(幅広いユーザー操作を捉えたもの)が使われた点です2。SpaceXは6月16日にCursor(運営元Anysphere)を600億ドルの株式交換で買収することに合意しており、買収クローズ(第3四半期見込み)に先んじて開発面での統合が形になった格好です4。
Cursor側では、デスクトップ・Web・iOS・CLI・SDKの全プランでGrok 4.5が即日利用可能になり、最初の1週間は利用枠が2倍になります2。Cursorの自社モデルComposer 2.5は別の重量クラスのモデルとして提供が継続されます2。なお、Grok BuildとCursorでは期間限定でGrok 4.5を無料利用できるキャンペーンも実施されています1。
コーディング以外では、Word・PowerPoint・Excel向けのプラグインがMicrosoftのマーケットプレイスで提供されており、複数シートのExcelモデル構築やスライド作成などのオフィスワークにも対応します1。
提供範囲と留意点
Grok 4.5は発表当日からGrok Build、Cursor全プラン、SpaceXAIコンソール(モデルID: grok-4.5)で利用できます1。ただしEUでは製品・APIとも未提供で、提供開始は7月中旬の見込みです1。Cursorには通常版(入力$2/出力$6)に加えて高速版(入力$4/出力$18)も用意されています2。
コーディングエージェント市場は、Alibaba従業員のClaude Code利用禁止のような地政学的な動きや、Claude Sonnet 5の低価格路線など、性能・価格・信頼の複数の軸で競争が激しくなっています。「Opus級を3分の1以下の単価で」と正面から価格競争を仕掛けるGrok 4.5の登場で、モデルの乗り換えコストが低いAPI市場では、各社の価格改定が続く可能性があります。
Sources
- Introducing Grok 4.5 - SpaceXAI公式ブログ(2026年7月8日)
- Introducing Grok 4.5 - Cursor公式ブログ(2026年7月8日)
- SpaceXAI releases Grok 4.5, which Elon describes as an ‘Opus-class model’ - TechCrunch
- SpaceX to acquire Cursor for $60B in stock, days after blockbuster IPO - TechCrunch(買収の背景)