OpenAIは2026年6月11日、クラウド実行環境を手がけるOnaを買収することで合意したと発表した1。Onaのセキュアなクラウド実行・オーケストレーション技術を、同社のAIコーディングプラットフォームであるCodexのエコシステムに統合する。買収の金銭的条件は公開されていない4。
Onaは、クラウド開発環境「Gitpod」として知られていた企業が2025年9月にリブランドした姿だ3。OpenAIの発表によると、買収は規制当局の承認を含む通常のクロージング条件の充足が前提で、完了までは両社は独立した会社として運営される。完了後、OnaチームはOpenAIに加わり、Codexチームと協働する1。
なぜCodexに「永続的な作業場所」が必要なのか
OpenAIは発表の中で、Codexの週間ユーザーが500万人を超え、年初から400%増加したことを明らかにした1。Codexはソフトウェア開発者向けツールとして始まったが、現在ではより幅広い層が調査・分析・構築・自動化に使うようになっているという1。
買収の背景にあるのは、エージェントが担う仕事の長時間化だ。OpenAIは「Codexの能力が高まるにつれ、最も価値のある仕事は数分ではなく、数時間から数日にわたって展開されるようになっている」と説明する1。作業を開始したマシンに縛られず、最初のセッションが終わった後もエージェントが作業を続け、ユーザーはどこからでも進捗確認や指示出しができるべきだ、というのが同社の考えだ1。
Onaの技術はまさにこの部分を担う。エージェントが必要なツール・システム・コンテキストにアクセスしながら時間をかけて作業を進められる、セキュアで永続的な環境を提供しており、ラップトップを閉じても顧客のクラウド環境内でエージェントが作業を続けられるようにする1。
Onaとは何者か - Gitpodからの転身
Onaの前身であるGitpodは、ソフトウェア開発をローカルマシンからクラウドに移すクラウド開発環境の提供者として知られ、200万人の開発者にセキュアで再現可能なクラウド環境を提供してきた1。
2025年9月2日、同社は社名をOnaに変更し、ソフトウェアエンジニアリングエージェントの管理基盤へと事業の軸足を移した3。共同創業者兼CEOのJohannes Landgraf氏はリブランド時に「IDEが前の時代を定義した。エージェントが次の時代を定義する」と述べている3。
転身後の成長は速く、Onaによると本番環境でのエージェントセッションは年初から13倍に拡大し、米国の歴史ある銀行、欧州の大手製薬企業、アジアのソブリン・ウェルス・ファンドといった大企業顧客を獲得していた2。
顧客管理型の実行モデル - エンタープライズ展開の鍵
今回の買収でOpenAIが強調するのが、Onaの「顧客管理型(customer-controlled)」の実行モデルだ。エージェントは組織自身のクラウド環境内で動作し、OpenAIはその体験を支えるインテリジェンスとオーケストレーションを提供する1。組織はエージェントがどこで実行されるか、何にアクセスできるか、認証情報の範囲、活動ログ、レビューのフローを自ら管理できるべきだ、とOpenAIは説明している1。
Landgraf氏は「エージェントにはインテリジェンス以上のものが必要だ。信頼できるワークスペースが必要だ」とコメントし、OpenAIへの参加によってその基盤をCodexに持ち込むとしている1。OpenAIでCore Products Leadを務めるThibault Sottiaux氏も「企業は、自社環境のセキュリティと管理要件を満たしながら実際の仕事をこなせる強力なエージェントを求めている」と述べ、本番ワークフローへのCodexの安全な展開を容易にする狙いを示した1。
OpenAIは買収後の構想として、テストの実行やIssueの解決からアプリケーションのモダナイズ、脆弱性対応まで、ソフトウェアライフサイクル全体にわたる持続的な作業をエンジニアリングチームが安全に任せられるようにするとしている1。なお、Onaは既存顧客へのコミットメントを継続するとしており、クロージングまでのサービス中断は予定されていない2。
開発ツール業界の再編が続く
AIコーディングツール業界では、エージェントの長時間・並列実行を前提とした再編が相次いでいる。直近でも、Cursorを開発するAnysphereによるコードレビュー企業Graphiteの買収や、CognitionによるWindsurfの「Devin Desktop」へのリブランドなど、単発のコード補完からエージェント管理基盤へと各社が重心を移す動きが続く。今回の買収は、OpenAIがモデルの能力だけでなく、エージェントが企業内で安全に動き続けるためのインフラ層まで自社で揃えにいく動きと考えられる。
買収完了にはまだ規制当局の承認が必要であり、統合後のCodexがどのような形でOnaの実行環境を取り込むかは今後の発表を待つことになる。GitpodからOnaへの転身の経緯は同社のリブランド発表3で、買収の詳細はOpenAIの公式発表1で確認できる。
Sources
- OpenAI to acquire Ona - OpenAI公式発表(2026年6月11日)
- Ona is joining OpenAI - Ona公式ブログ(2026年6月11日)
- Gitpod is now Ona: your AI software engineer - Ona公式ブログ(2025年9月2日)
- OpenAI agrees to acquire AI cloud startup ‘Ona’, team will join Codex division - The Tech Portal(2026年6月11日)