Metaは2026年7月10日(太平洋時間15時45分)、画像生成モデル「Muse Image」の@メンション機能の提供を終了したと発表しました1。この機能は、Meta AIアプリ内でInstagramの公開アカウントを@メンションすると、そのアカウントの公開写真を参照した画像を生成できるというものでした1。Metaは公式ニュースルーム記事への追記で「この機能は期待に応えられなかった(missed the mark)というフィードバックを受け、提供を終了した」と説明しています1。
Muse Imageは、Metaの研究組織Meta Superintelligence Labs初の画像生成モデルとして7月7日に発表されたばかりでした13。目玉機能のひとつだった@メンションは、公開からわずか3日で撤回されたことになります2。
「オプトアウト方式」が批判の的に
批判が集中したのは、機能の仕組みそのものよりも「初期設定で誰が対象になるか」でした。@メンションによる参照の対象は公開Instagramアカウントで、自動的に除外されるのは非公開アカウントと18歳未満のユーザーのみ3。つまり18歳以上で公開アカウントを持つユーザーは、何も操作しなければ、自分の写真を他人のAI画像生成の素材として参照されうる状態に置かれていました3。
参照を拒否するには、Instagramのプロフィール設定から「Sharing and reuse(共有と再利用)」を開き、「Allow people to use your content on Instagram with AI features on Meta」の設定を投稿・リールの両方でオフにする必要がありました3。Meta側は「公開コンテンツを参照されるかどうかを自分でコントロールできる」ことを意図したと説明していますが1、ユーザーやクリエイターからは、自分の写真が使われても通知されない点への反発が相次ぎました2。
クリエイター・俳優組合・タレント事務所にも波及
反発は一般ユーザーにとどまりませんでした。クリエイターからは、この仕組みによって自分の作品の見た目や作風を他人が模倣しやすくなるという懸念が出たほか4、同意のないまま不適切な画像の生成に悪用されうるという指摘もありました2。
業界団体の動きも早く、俳優組合SAG-AFTRAはメンバーに設定をオフにするよう呼びかけ、AIツールには「同意ファースト」のアプローチを取るよう求めました4。大手タレント事務所CAA(Creative Artists Agency)も懸念を表明したと報じられています2。写真を「公開している」ことと、AI生成の素材として「利用に同意している」ことは別問題だ、という論点が短期間で広く共有された形です。
Muse連続発表の中で初のつまずき
Meta Superintelligence Labsは2026年4月の大規模言語モデル「Muse Spark」以降、7月7日にMuse Image / Muse Video、7月9日にはコーディング向けのMuse Spark 1.1とMeta Model APIと、短い間隔で発表を重ねてきました。Muse Imageの強みは、数十億人が日常的に使うInstagramやWhatsAppに画像生成モデルを直接組み込める配布網にありますが、今回はまさにその「既存のSNSとAIを密結合させる」部分でつまずいたことになります。
なお、撤回されたのは@メンション機能のみで、Muse Image自体はMeta AIアプリやInstagram StoriesのAIエフェクトなどで引き続き提供されています1。
設定確認と「オプトアウト設計」の教訓
Instagramで公開アカウントを運用している読者は、今回の撤回で当面のリスクは下がったものの、「Sharing and reuse」の設定項目は一度確認しておく価値があります3。Metaの追記は「提供終了」としか述べておらず、同様の機能が形を変えて再登場する可能性は否定されていません1。
企業でAI機能の設計に関わる読者にとっては、オプトアウト方式の設計判断が数日で撤回に追い込まれた事例として示唆的です。AI生成コンテンツをめぐっては、GoogleがAIで作られた広告の開示表示を始めるなど、透明性と同意を前提にした設計へ業界全体が動いています。「技術的に可能で、規約上も許される」ことと「ユーザーが受け入れる」ことの間には距離があり、特に人の顔や作品を扱う機能では、初期設定を「参加」にするか「不参加」にするかがプロダクトの信頼そのものを左右する、という教訓を残した出来事といえます。
Sources
- Introducing Muse Image: Image Generation Built for Your World - Meta公式ニュースルーム(2026年7月7日、7月10日に撤回の追記)
- Meta removes controversial AI feature on Instagram after backlash - TechCrunch(2026年7月10日)
- Instagram users: Here’s how to stop Meta’s AI from using your photos - TechCrunch(2026年7月9日)
- Meta Removes AI Image Generation Feature That Used Public Instagram Posts Following User Backlash - PetaPixel(2026年7月10日)