オーストラリア首相、国家AI枠組み「Australian Standards for AI」を発表 - データセンターに再エネ純供給義務、無断学習は「窃盗」

Albanese豪首相が7月15日、国家AI戦略を発表。首相府にAI室を新設、大規模データセンターに電力の純供給義務、AI学習の著作権例外を否定。NY州モラトリアムやEU AI Actと並ぶAI規制の新パターンを解説

オーストラリア首相、国家AI枠組み「Australian Standards for AI」を発表 - データセンターに再エネ純供給義務、無断学習は「窃盗」

オーストラリアのAnthony Albanese首相は2026年7月15日、シドニー大学での演説で、国家レベルのAI規制枠組み「Australian Standards for AI」の策定を発表しました1。首相府内へのAI専門部署の新設、大規模データセンターへのエネルギー・水利用義務、AI学習における創作者の権利保護を柱とし、法案は2027年初頭の議会提出を目指します1

Albanese首相はAIを「ソーシャルメディアより大きな課題であり、大きな機会」と位置づけ2、「AIがもたらす世代的な機会をつかみ、形づくり、分かち合うため、政府はAustralian Standards for AIを確立する」と述べました1

3本柱 - 国家標準、AI室、データセンター義務

発表の1つ目の柱は、国全体で統一されたAI標準の確立です。州ごと・分野ごとにばらばらに規制するのではなく、単一の国家枠組みでAIとそのインフラを扱う設計で、首相は来月招集するNational Cabinet(国家内閣、州首相らとの協議体)で合意を取りつけ、法案を2027年初頭に議会へ提出する計画を示しました1

2つ目は司令塔の新設です。首相は「本日付けで、首相内閣省内にOffice of AI(AI室)を設置する」と述べ、政府横断のAI政策をこの部署で調整するとしました1

3つ目が、今回の発表でもっとも具体的なデータセンター義務です。次世代の大規模データセンターに対し、新しい電力供給を自ら確保する法的義務を課したうえで、「系統から取り出すのと少なくとも同量のエネルギーを系統に供給すること」を求めます1。つまり大規模データセンターは電力の純消費者ではなく純供給者であることが求められます。加えて、水利用の最小化・エネルギー効率の最大化を義務づけ、追加の水インフラが必要な場合はその費用を事業者に負担させ1、家庭の電気料金を上昇させないことも求める方針です2

「それ以下のものは窃盗だ」 - AI学習の著作権例外を明確に否定

演説でもっとも強い言葉が使われたのが著作権です。Albanese首相は「オーストラリアの作家・音楽家・アーティスト・ジャーナリストは、自らの作品の所有権とコントロールを保持しなければならない。いかなる企業も、アーティストのコントロールなしにオーストラリアの書籍・音楽・アート・ニュースをAIの構築や学習に使うべきではない」と述べ、「それ以下のものは窃盗だ」と言い切りました1

これは、AI開発企業に学習利用の対価支払いを求める立場の再確認であり、The Conversationは、テキスト・データマイニングへの著作権例外を認める方向の米国・EU・日本とは異なる路線だと指摘しています2。ただし、対価が実際にアーティストや音楽家に届く仕組みの詳細は未定です2

多層化するAI規制の中での「豪州型」

AI規制はこの1年で急速に多層化しています。米国ではイリノイ州がフロンティアAIへの年次第三者監査を義務化するなど州単位の立法が進み、国連は170超の国が参加するGlobal Dialogue on AI Governanceで国際的な調整を始めました。データセンターについては、ニューヨーク州が50MW超の新規建設許可を最長1年停止するモラトリアムを導入したばかりです。

豪州の設計はこれらのどれとも少し異なります。NY州が「一時停止して考える」アプローチなのに対し、豪州は建設自体は止めず、電力の純供給義務という条件付きで受け入れる設計です。実際、政府はデータセンター建設の一時停止を求める声を拒否しています2。一方で「単一の国家枠組み」という点では、分野別・州別に分かれる米国型より、包括的なEU AI Act型に近い発想です。ただしThe Conversationは、首相側の「世界初の統一AI枠組み」という位置づけについて、2024年に成立したEUのAI法があることを踏まえると誇張だと指摘しており2、誤情報やディープフェイクへの義務的なガードレールが含まれていない点も未解決の論点として挙げています2

データセンター規制の「次のパターン」として

日本の読者にとってこの発表が参考になるのは、AIインフラの電力・水問題への対処として「モラトリアム(NY型)」とも「誘致優先」とも違う第3の型が示されたことです。再エネ純供給義務という条件は、データセンター事業者に発電投資まで求めるもので、実現すればインフラ投資の計画やコスト構造に大きく影響します。日本でもデータセンターの立地と電力負荷は今後の論点であり、各国がどの型を選ぶかは、AI関連のインフラ投資や進出先の判断材料になります。

著作権の面では、「学習利用への対価支払い」を国家方針として明示する国が現れたことで、AI開発企業のデータ調達コストが国・地域によって大きく変わる可能性が出てきました。豪州の法案は2027年初頭提出予定であり1、具体的な対価の仕組みと、グローバルなAI企業がこの市場にどう対応するかが次の注目点です。

Sources

  1. AI in Australia’s interests | Prime Minister of Australia - 豪首相府(演説全文)
  2. Australia wants to ‘manage’ AI. What will that look like? - The Conversation
  3. AI in Australia’s interests | Ministers for the Department of Industry, Science and Resources - 豪産業科学資源省

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