Abu Dhabiの投資会社MGXは2026年7月1日、AI特化ファンド「MGX Fund I」を総額490億ドルのコミットメントで最終クローズしたと発表しました1。当初の目標ファンドサイズである450億ドルを大きく上回っており、AI分野に絞った単一ファンドとしては史上最大級の規模になります。
MGXの発表によると、Fund Iには湾岸諸国・北米・アジア・欧州の主要な機関投資家と私的投資家が出資しました1。投資対象は半導体、AIインフラ、AIおよびAIを支える技術・プラットフォームを含む「AI技術スタック全域」で、設立以来すでに14社への投資を実行しています1。
MGXとは - UAE国家戦略を背負うAI投資会社
MGXは2024年に設立された、AIと先端技術への投資に特化した私的投資会社です12。Abu Dhabiの政府系ファンドMubadala Investment CompanyとAI企業グループG42をパートナーとし2、会長はUAEの国家安全保障顧問でAbu Dhabi副首長のSheikh Tahnoon bin Zayed氏が務めます23。設立からわずか2年で、AI投資の世界で最も影響力のあるプレイヤーの一つになりました。
その存在感を支えてきたのが、主要AI企業への大型出資です。MGXはOpenAIの資金調達ラウンド(評価額3000億ドル時)に参加したほか2、2026年5月31日にはAnthropicの650億ドルのSeries H資金調達(ポストマネー評価額9650億ドル)への参加を発表しています1。生成AIの2強と目される両社の株主に、同時に名を連ねている形です。
インフラへの傾斜 - データセンターからAIファクトリーまで
MGXの投資はモデル開発企業への出資にとどまりません。2024年9月にはBlackRockやMicrosoftらによる300億ドル規模のAIインフラ投資枠組み「Global AI Infrastructure Investment Partnership」に参加し3、2025年10月には米データセンター企業Aligned Data Centersを400億ドルで買収するコンソーシアムに加わりました23。
欧州でも、Bpifrance・Mistralとともにフランスで「Campus AI」を拡張し、3ギガワットのAIファクトリー網を展開する計画を2026年6月に発表しています1。AGBIはこの拡張を75億ユーロ(87億ドル)規模の投資と伝えており3、米国偏重になりがちなAIインフラ投資の中で欧州にも広がりを見せています。
こうした動きは、AI投資の重心が「モデルを作る企業」から「モデルを動かす計算基盤」へ広がっている流れと重なります。日本でもソフトバンクが米国でネオクラウド新会社SB Neoを設立するなど、電力・データセンター・計算資源を押さえる動きが各国で加速しており、MGXの490億ドルはその資金面の裏付けの厚さを示しています。
AIマネーの現在地を測る指標に
AGBIは今回のクローズについて、世界の機関投資家がAIセクターに資金を注ぎ込む中で「MGXは自らの想定を超える490億ドルを集めた」と伝えています3。AI関連の資金調達では、OpenAIが評価額8520億ドルでIPO準備を進めるなど桁の大きな数字が続いていますが、投資する側のファンドが単体で490億ドルという規模に達したことは、この資金流入が一過性ではなく、機関投資家の資産配分として定着しつつあることを示すと考えられます。
一方で、490億ドルという規模は投資先の選別が難しくなることも意味します。MGXは「差別化された、アクセスが限られる投資機会」への規律ある投資を掲げていますが1、AIインフラはコモディティ化のリスクも指摘される分野です。14社という集中的なポートフォリオ1がどのようなリターンを生むかは、AI投資ブーム全体の持続性を測る試金石になるでしょう。
発表の原文はMGX公式サイトのニュースリリースで確認できます。
Sources
- MGX is pleased to confirm the final close of MGX Fund I at $49 billion in total commitments - MGX公式発表
- Abu Dhabi’s AI investment firm MGX raises $49bn for new fund - The National
- MGX raises $49bn as investors flock to AI - AGBI