Alibabaの動画生成「Wan3.0」、PowerPointやPDFを参照素材にできる - 最長30秒・30fps
Alibaba Cloudが動画生成モデル「Wan3.0」のAPIドキュメントを公開した。最長30秒・30fpsで、テキスト・画像・参照素材からの生成をひとつのモデルで扱う。docxやpptx、pdfといった資料ファイル(50ページまで)や公開Webページ1件を参照素材として渡せる点が目を引く。
Alibaba Cloud のモデルプラットフォーム Model Studio(百煉)に、動画生成モデル 万相3.0(Wan3.0、モデルID wan3.0-video) のAPIリファレンスが公開された1。TechNode は8月24日、Alibaba が30秒生成とドキュメント入力を備えた Wan3.0 を launch したと報じている2。
公式ドキュメントは同モデルを「オールインワン(All-in-One)の全能参照動画生成モデル」と説明しており、テキストから動画、画像から動画(先頭フレーム、または先頭+末尾フレーム指定)、参照素材から動画という複数の使い方を ひとつのモデルで統一的に扱う としている1。最長30秒、出力は30fpsだ1。
資料を渡すと動画になる
仕様のなかで目を引くのは、生成時間ではなく 入力の側 である。
参照素材(media)として渡せるのは、画像・動画・音声だけではない。ファイル と Webページ が入力形式として並んでいる1。ファイルの対応形式は docx、doc、xlsx、xls、pptx、ppt、pdf、txt、key、pages、numbers、md で、ページ数は50ページ以内という制限がある(pdf、docx、doc、pptx、ppt、key、pages について検証される)1。Wordの企画書、Excelの一覧、PowerPointの提案資料、Keynoteのスライド、Pagesの原稿——普段の業務で作っているファイルがそのまま参照素材の枠に収まっている。
Webページ入力(type=link)は最大1件で、ファイル入力とは併用できない。解析できるのはログイン不要の公開ページに限られ、ドキュメントはニュース・ブログ・公式アカウント記事などを例に挙げている1。
公式ドキュメントに載っているサンプルコードも、この使い方を前提にしている。スマートグラスの製品広告を作る例で、media に pptx ファイルを1つ渡し、プロンプトで映像の方向性を指定する構成になっている1。
参照素材には上限もある。参照動画は最大5本・合計15秒以内、参照音声も最大5本・合計15秒以内1。参照画像はJPEG、JPG、PNG(透過チャンネル非対応)、BMP、WEBPに対応する1。
実務で効くパラメータ
生成条件の指定には、いくつか押さえておくと使い勝手が変わるパラメータがある1。
解像度 は 1080P / 720P / 480P の3段階で、既定値は1080P。アスペクト比は adaptive(既定・入力素材の比率と意図から自動で推奨)のほか、16:9 / 4:3 / 1:1 / 3:4 / 9:16 を指定できる。縦動画がそのまま選べる点は、SNS向けの制作では実務的だ。
長さ(duration)の既定値は5秒。動画入力がない場合は2〜30秒の整数を指定でき、動画入力がある場合は「入力動画の総時間+出力動画の時間」が30秒を超えない範囲に収まる。-1 を渡すと「智能时长模式(スマート時長モード)」になり、プロンプトと入力内容からモデルが適切な長さを判断する。
音声(audio)は既定でオン、つまり出力動画に音が入る。オフにすると音声トラックなしになるが、ドキュメントには「音声のオン・オフで価格は同じ」と明記されている1。ウォーターマーク(watermark)は既定で オフ だ1。プロンプトの自動リライト(prompt_extend)は既定でオンで、短いプロンプトほど効果が出やすいが処理時間が増えるとされる1。
呼び出しは非同期で、生成には通常1〜5分かかる。「タスク作成 → ポーリングで取得」の2段階になっており、返される task_id の有効期限は24時間だ1。ワークフローに組み込む場合は、この待ち時間を前提にした設計が要る。
リージョンの制約
エンドポイントとして記載されているのは、北京・シンガポール・日本(東京)・ドイツ(フランクフルト)・米国(バージニア)の5カ所だ1。日本リージョンが用意されているのは、国内で使う場合の選択肢になる。
ただしドキュメントは、モデル・エンドポイントURL・API Key がすべて同じリージョンに属している必要があり、リージョンをまたぐ呼び出しは失敗する と明記している1。事前にモデル広場で対象モデルの所属リージョンを確認するよう促されている。データの処理地域を業務要件として決めている場合、この制約は最初に確認しておく項目になる。
分かっていないこと
一方、公式ドキュメントから読み取れない部分もある。
品質や他モデルとの優劣は書かれていない。 APIリファレンスは仕様を記した文書であり、ベンチマークの数字や比較は含まれていない。前世代からどれだけ良くなったかも、この資料からは判断できない。
ウェイトは公開されていない。 Hugging Face の Wan-AI では、2026年8月25日時点で最新が8月13日更新の Wan2.2-Animate-2-14B 系で、Wan3.0 のリポジトリは見当たらない。同社は Qwen3.8のウェイトを段階的に公開 しており、Maxクラスのウェイト公開を予告 してもいたが、動画生成モデルについては現時点でAPI提供のみという形になっている。
Alibaba のAIまわりの動きが加速していること自体は、別の角度からも見えている。同社は8月23日に香港市場で HK$800億の新株発行を発表し、手取り金の100%をAI能力への投資に充てる としていた(この増資のクローズは8月26日予定とされている)。翌24日の動画モデル公開は、その資金が向かう先のひとつを具体的な製品の形で示したことになる。
制作の現場から見ると、今回の仕様変更で問われるのは「プロンプトをどう書くか」ではなく「どの資料を渡すか」に近い。企画書やスライドが素材になるなら、制作前の資料づくりの段階から出力を意識する必要が出てくる。50ページという上限も、渡す資料を選ぶ作業が発生することを意味している。
Sources
- 万相3.0-视频生成API参考 - 大模型服务平台百炼(Model Studio) - Alibaba Cloud 公式ドキュメント
- Alibaba launches Wan3.0 video model with 30-second generation and document input - TechNode(2026年8月24日)
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