Anthropic、Claude Fable 5とMythos 5を発表 - Mythos級モデルを一般提供へ

Anthropicが新モデルClaude Fable 5とClaude Mythos 5を同時発表。同一の基盤モデルを安全対策の有無で2系統に分け、最上位の能力を一般ユーザーにも提供する新しいリリース方式を採用した。

Anthropic、Claude Fable 5とMythos 5を発表 - Mythos級モデルを一般提供へ

Anthropicは2026年6月9日、新しいAIモデル「Claude Fable 5」と「Claude Mythos 5」を同時発表した1。両者は同一の基盤モデルであり、Fable 5は安全対策(セーフガード)を有効にした一般提供版、Mythos 5は一部領域のセーフガードを解除した限定提供版という位置付けになる13。Anthropicはこの新しいモデル階層を「Mythos級(Mythos-class)」と呼んでおり、従来のOpusの上位に位置する。

Anthropicによると、Fable 5の能力は同社が過去に一般提供したいかなるモデルをも上回り、テストされたAI能力ベンチマークのほぼすべてで最先端の結果を示したという1。価格は入力100万トークンあたり10ドル、出力100万トークンあたり50ドルで、先行して限定提供されていたClaude Mythos Previewの半額以下に設定されている1

Fable 5の能力 - ソフトウェア開発からビジョンまで

発表で示された事例の中でも目を引くのがソフトウェアエンジニアリングでの成果だ。決済企業Stripeのテストでは、Fable 5が数ヶ月分のエンジニアリング作業を数日に圧縮し、5000万行のRubyコードベースで本来2ヶ月を要する移行作業を1日で実行したと報告されている1。コード評価ではCognitionのFrontierCodeベンチマークにおいて、努力レベル(effort)が中程度の設定でもフロンティアモデル中で最高スコアを記録した1

ビジョン(画像理解)能力も強化された。科学図表から正確な数値を抽出できるほか、スクリーンショットのみからWebアプリのソースコードを再構築できるという1。デモンストレーションとしては、ゲーム画面のみを入力として「ポケモンFireRed」を完全クリアした例が示された1。AWSの紹介記事でも、図表・チャート・PDF内のテーブルの理解や、学習に基づいてスキルを自己更新するプロアクティブな自己検証が特徴として挙げられている2

長時間タスクへの対応も進んだ。Fable 5は数百万トークンに及ぶ長時間タスクで集中力を維持し、自身のメモを使用して出力を改善できるとされる1。技術仕様としては、コンテキストウィンドウは100万トークン、最大出力は1レスポンスあたり12.8万トークンと報じられている3。APIでのモデルIDは claude-fable-53

安全対策の仕組み - 検出時はOpus 4.8が回答

Fable 5の特徴は、モデルの能力だけでなく安全対策の設計にもある。サイバーセキュリティ、生物学・化学、蒸留(競合モデル開発を目的とした能力抽出)の3領域で、分類器(classifier)ベースのセーフガードが実装されている1

対象領域のリクエストが検出された場合、Claude Opus 4.8が自動的に回答を提供するフォールバック方式を採用しており、Anthropicによるとフォールバックが発生しないセッションは全体の95%以上だという1。AWSの記事によれば、Opus 4.8にルーティングされた場合の課金はOpus価格のみとなる2

堅牢性の検証も外部で行われた。外部のバグバウンティでは1000時間以上のテストで普遍的なジェイルブレイクは発見されず、ある外部パートナーの評価では、30個の異なる公開ジェイルブレイク技術を使用した場合でも有害な単一ターン要求への順守はゼロだったと報告されている1。また、Mythos級モデルでは全トラフィックに30日間のデータ保持が義務付けられ、保持データは新しいClaudeモデルの訓練やセーフティ以外の目的には使用しないと規定されている1

Mythos 5とProject Glasswing - サイバー防衛への限定提供

一方のMythos 5は、Fable 5と同じ基盤モデルでありながら、サイバーセキュリティ分野のセーフガードが解除されたバージョンだ1。提供先は米国政府と協力するプログラム「Project Glasswing」のパートナーであるサイバー防衛組織に限定される1。Anthropicは2026年4月に最初のMythos級モデル「Claude Mythos Preview」を同プログラムを通じてサイバー防衛担当者と重要インフラ提供業者に限定リリースしており、Mythos 5はそのアップグレード版にあたる1

Mythos 5は世界のどのモデルよりも強力なサイバーセキュリティ能力を持つとされる1。生命科学分野でも成果が示されており、Anthropic内部のタンパク質設計専門家がMythos 5を用いて治療開発プロセスの一部を約10倍に加速し、14個のタンパク質ターゲットのうち9個で医薬品デザイン候補を生成したという1。生物学・化学領域は現在ほとんどの要求がOpus 4.8へフォールバックされるが、生物学研究者向けの信頼されたアクセスプログラムが近日開始予定とされている1

提供形態と価格

Fable 5は発表日からAPIおよび従量課金制のエンタープライズプランで即時利用可能になった1。サブスクリプションプランでは段階的なロールアウトが予定されており、6月22日まではPro/Max/Team/シート型Enterpriseプランに追加料金なしで含まれ、6月23日以降は使用クレジットが必要になる。容量が許せば段階的に標準提供へ戻す予定だという1

AWS環境ではAmazon Bedrock(US East、Europe Stockholm)とClaude Platform on AWS(北米・南米・欧州・アジア太平洋)で利用できる2。価格の入力10ドル/出力50ドル(100万トークンあたり)は、Opus 4.8のちょうど2倍にあたる3

「同一モデル・2系統」というリリース方式の意味

今回の発表で注目すべきは、性能向上そのものに加えて、同一モデルを安全対策の有無で2つの名前に分けて提供するリリース方式だ。サイバーセキュリティや生命科学のような高い能力が攻撃にも防御にも使えるデュアルユース領域では、能力を一律に制限すれば正当な研究者や防衛組織の利用まで妨げてしまう。一般向けには分類器とフォールバックで保護しつつ、審査済みの組織には制限を解除したモデルを提供するこの方式は、能力と安全性のトレードオフに対する1つの現実的な解と考えられる。

整列性(アライメント)の面では、Mythos 5に対する自動評価で不整列行動のレベルがOpus 4.8と同等に低いとされ、同じ基盤モデルであるFable 5も同様の特性を持つと説明されている1。最上位の能力を持つモデルが一般ユーザーの手に届くようになったことで、各社の今後のモデル提供戦略にも影響を与える可能性がある。

詳細な技術仕様やAPIでの利用方法は、Anthropicの公式ドキュメントおよびAWSの紹介記事で確認できる。

Sources

  1. Claude Fable 5 and Claude Mythos 5 - Anthropic公式発表
  2. Anthropic Claude Fable 5 on AWS: Mythos-class capabilities with built-in safeguards now available - AWS公式ブログ
  3. Claude Fable 5: Anthropic’s New Mythos-Class Model (Benchmarks, Pricing & What’s New) - Coder’s Era(技術ブログ)

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