OpenAI・Anthropic・DeepMind・Microsoft AIのトップが連名、合成DNAスクリーニング義務化を米議会に要請

2026年6月4日、Sam Altman、Dario Amodei、Demis Hassabis、Mustafa Suleymanらが合成DNA・RNAのスクリーニングと記録保管の義務化を米議会に求める公開書簡に署名。AIが生物兵器の知識障壁を侵食するとの懸念を、競合4社のトップが揃って表明した。

OpenAI・Anthropic・DeepMind・Microsoft AIのトップが連名、合成DNAスクリーニング義務化を米議会に要請

OpenAIのSam Altman、AnthropicのDario Amodei、Google DeepMindのDemis Hassabis、Microsoft AIのMustafa Suleymanという、AI開発競争の最前線で争う4社のトップが、1通の公開書簡に揃って署名した。2026年6月4日に公開された「In Support of Mandatory Nucleic Acid Synthesis Screening and Recordkeeping(義務的な核酸合成スクリーニングと記録保管を支持して)」と題する書簡は、合成DNA・RNAの注文に対するスクリーニングと記録保管を法律で義務付けるよう米議会に求めている1

書簡を公開したのはシンクタンクのFoundation for American Innovationで、署名者にはAI企業のトップだけでなく、合成DNA製造企業の経営者、ノーベル賞受賞者を含む研究者、元政府高官が名を連ねる12。激しく競合する企業のトップが安全保障の領域で協調する、近年でも珍しい動きだ。

AIが生物兵器の「知識障壁」を侵食する

書簡の中核にあるのは、AIの進歩がバイオセキュリティのリスク構造を変えつつあるという認識だ。書簡は「AIシステムは急速に向上しており、科学と医学への大きな恩恵とともに、悪意ある者が生物兵器を入手することを歴史的に防いできた知識の障壁が大きく損なわれる現実的な可能性がある」と述べている12

具体的な能力の変化として、書簡は「AIシステムは現在、高度に技術的な実験手順に関する質問で博士レベルのウイルス学者を上回る」と指摘する1。専門知識がボトルネックでなくなりつつあるなら、物理的な材料の入手、つまり合成DNA・RNAの注文の段階で悪用を食い止める必要がある、というのが書簡の論理である。

その対策としてスクリーニングが選ばれた理由について、書簡は「スクリーニングは利用可能なバイオセキュリティ対策の中で最も理解が進んでおり、最も混乱の少ないものの一つ」だと説明し、「追跡可能性の認識自体が悪用を抑止する」とも述べている1

要求は「自主的取り組み」の法制化

合成DNA・RNAの販売企業の多くは、現在も自主的にスクリーニングを実施している。書簡が求めているのは、この自主的な取り組みの法的義務化だ2。具体的には、合成DNA企業と製造業者に対して、懸念される配列のチェック、顧客の正当性確認、注文記録と販売材料の仕様の詳細な記録保管を義務付けることを要求している12

議会に対しては「議会は今会期中に行動すべきであり、現在進行中の立法努力を称賛する」として、統一的な国家基準の確立を要望した1。関連する動きとして、Tom Cotton上院議員(共和党)とAmy Klobuchar上院議員(民主党)は2026年2月に「Biosecurity Modernization and Innovation Act of 2026」を提出している2

AI・バイオ・安全保障を横断する署名者

今回の書簡で注目されるのは署名者の幅広さだ。AI企業4社のトップとMetaのChief AI OfficerであるAlexandr Wangに加え、合成DNA製造大手Twist BioscienceのEmily Leproust、Ansa BiotechnologiesのJason T. Gammackといった規制対象になり得る業界の経営者自身が署名している12。研究者からはノーベル賞受賞者のDavid Baker、MITのKevin Esvelt、Johns HopkinsのTom Inglesbyが、元政府高官からはRichard Danzig元海軍長官、Christine E. Wormuth元陸軍長官が加わった1

書簡自身が「これは、しばしば対立するステークホルダー間の合意という稀な瞬間である」と述べる通り1、規制を求める側と規制される側が一致して立法を求める構図になっている。

AI安全保障をめぐる動きが集中した1週間

この書簡が公開された週は、米国のAI安全保障をめぐる動きが相次いだ。6月2日にはトランプ大統領がフロンティアAIモデルの自主的な事前審査枠組みを含む大統領令に署名し(関連記事)、6月4日にはAnthropicがAIの再帰的自己改善のリスクを論じてフロンティアAI開発の「一時停止オプション」を提案した(関連記事)。

AIの能力向上が現実の安全保障リスクに接続し始めたという認識が、政府・開発企業・研究コミュニティに共有されつつあることを示す動きと言える。書簡の全文と署名者リストはFoundation for American Innovationのサイトで公開されている1

Sources

  1. In Support of Mandatory Nucleic Acid Synthesis Screening and Recordkeeping - Foundation for American Innovation(書簡本文)
  2. Sam Altman, Dario Amodei urge Congress to guard against AI-enabled bioweapons - Fortune(報道)

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